安全なネットワークを、比較的安価に実現できるVPN。会社間のやりとりやテレワークといったビジネスシーンで使用できるネットワークとして重宝されています。ほかにも、海外サービスの利用や安全なネットサーフィンをしたい個人向け用途でもVPNは人気です。
しかし、「どんな仕組みか理解していない状態で使っていて不安」と感じている方も多いですよね。また、「他の社員に説明しなければならないのに、メリット・デメリットもよくわかっていない」という方もいるのではないでしょうか。
VPNの仕組みやデメリットを知らないまま使っていると、情報漏洩や利用規約違反など、重大なミスにつながる恐れもあります。
そこでこの記事では、VPN接続の仕組みや利用シーン、メリットやデメリットをわかりやすく解説します。IT初心者でも理解しやすいようにわかりやすく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
VPN接続とは、安全なデータ通信を行うための仮想的な回線
VPNはVirtual Private Networkの略で、仮想的なプライベートネットワークのこと。インターネット上で安全なデータ通信を行うためにVPNは使われます。
普段我々が利用している公衆回線は、さまざまな人が同じ回線を使っているので、悪意のある人間によってデータをのぞき見られるリスクがあります。VPNは公衆回線の中に仮想的な専用の回線を作り、情報流出のリスクを減らす技術です。
わかりにくいと感じる方は、VPNをトンネルに、公衆回線は道路に、データを車に例えるとわかりやすいです。道路は全ての人が利用できるので、車内(データ)をのぞかれトラブルが起きる可能性があります。トンネルは道路に比べると車内をのぞかれる可能性が低いです。
このように、VPNはより安全にインターネット上でデータ通信を行うために使われる技術です。とくに、企業がインターネット上での情報漏洩を防ぐためにVPNは重宝されています。
編集部
VPN接続の仕組み
VPNが「仮想的なプライベートネットワーク」ということはわかったものの、どのような仕組みで安全なデータ通信を実現させているのでしょうか。
ここでは、VPN接続で使われている主な4つの技術「トンネリング」「カプセル化」「認証」「暗号化」の仕組みについて解説していきます。
「トンネリング」「カプセル化」で、仮想の回線を作り出す
トンネリングは、公衆回線内にトンネルのような仮想の回線を作るために使われる技術です。さまざまな人が使用している公衆回線とは別の空間でデータのやりとりが行えるため、第三者からデータをのぞき見られなくなります。
しかし、トンネリングをしていても、トンネルの中までデータをのぞき見されるリスクは0ではありません。そんなときに役に立つのが「カプセル化」です。カプセル化はデータをカプセルのように覆う技術で、データをのぞき見られても外からはデータの状態がわかりません。
トンネル内でデータは分割されて、パケットと呼ばれる小さなデータになります。パケットには送信元IPアドレスや宛先のIPアドレスが記述されているヘッダ部と、データの内容が記述されるデータ部があります。このパケットにトンネルの出口を宛先とした新しいヘッダ部を付け加え、元々のパケットのヘッダ部・データ部をまとめて隠した状態のパケットにするのがカプセル化です。
編集部
カプセル化はトンネルの入り口で実行され、出口で解除されます。つまりデータを送信すると、トンネルの入り口でカプセル化され、トンネルの出口まで送られた後、再度元のデータに戻って目的の宛先まで届けられます。
「認証」「暗号化」でセキュリティを高める
VPNのセキュリティを高めるために使われている技術が認証・暗号化です。
認証はVPNのユーザーが登録済みの正規のユーザーかを確かめてくれる技術。不正なユーザーがデータを受け取ったり、送信したりする心配がなくなります。
暗号化はカプセル化と同時に行われ、トンネル内部に侵入してデータをのぞかれても解読できないようにします。
VPNのセキュリティについては、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方はぜひチェックしてみてください。
関連記事:VPNでセキュリティ強化ができる3つの理由!セキュリティソフトとの違いも解説
VPN接続が利用されるシーン
具体的にVPN接続がどんなときに使われているのかご紹介します。
前提として、VPNはビジネス向け・個人向けの用途で変わります。ビジネス・個人向けどちらのシーンの用途も紹介してきますので、是非参考にしてみてください。
【ビジネス向け】社外から機密情報を扱うような、テレワークをするときに活躍
情報漏洩を防ぎ、安全にテレワークをしたい方にVPNは活用されています。特に、顧客情報といった社内の機密情報に、会社外からアクセスするときはVPNが必須。VPNを利用せずアクセスすると、ハッカーに機密情報を盗まれてしまう可能性があります。
また、VPNを社員に使わせてインターネット利用を制限できるのもポイント。マルウェア感染の危険があるサイトにアクセスするのを防げます。業務中にオンラインゲームをしたり、業務に関係ないサイトにアクセスしたりしていないかも確認できます。
編集部
【ビジネス向け】会社間・拠点間で、機密情報の送受信をしたいときに活躍
複数の会社・拠点間で機密情報を送受信するときにもVPNは活用されています。社内で取り扱っている機密情報を、他の拠点に送る際に、一般的な公衆回線を使用するのは危険です。VPNを使えば、情報漏洩のリスクが下がるため、複数の会社・拠点間で機密情報を扱う際にもVPNは重宝されています。
編集部
【個人向け】安全にインターネットコンテンツを楽しみたいときに活躍
ここまで主にビジネス用途での利用シーンについて紹介してきましたが、もちろん個人用途でもVPNは活躍します。
個人向けでVPNが活躍するシーンとしては、安全にインターネットを楽しみたいときです。近年のWebサイトは「SSL化」と呼ばれる技術を使われたサイトが多いため、データ通信を盗聴される危険性も少なくなっています。
しかし、海外や個人のサイトなど、まだまだSSL化がされていないWebサイトも多くあり、アクセスするにはリスクを伴う場面も少なくありません。このように「アクセスするのが少し怖いな」というWebサイトにアクセスする際に、安全なデータ通信を行えるVPNが活躍します。
編集部
【ビジネス向け】VPNと専用線との違い
VPNと似た用途の技術に「専用線」があります。VPNは公衆回線の中に「仮想的な専用の回線」を作り、情報流出のリスクを減らす技術です。対して専用線は支社・オフィス・営業所などの各拠点間を公衆回線とは独立した「専用回線」でつなぐ技術。
VPNも仮想的な専用回線をつくるものの、公衆回線の一部を利用しているにすぎません。専用線は公衆回線ではなく完全な専用回線のため、第三者がアクセスはできず、VPNよりもセキュリティ面で非常に優れています。外部のユーザーが利用できないため回線が混み合うこともなく、通信速度も安定していて高速なのも特徴です。
以下の表にVPNと専用線の違いをまとめたので、導入前にどちらが自分に合っているか確認してみましょう。
比較項目 | VPN | 専用線 |
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セキュリティ |
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通信品質・速度 |
|
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費用 |
|
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複数の拠点間での利用やテレワークでの利用のしやすさ |
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VPN接続のメリット
ここまでVPN接続について詳しく解説してきましたが、改めてVPN接続のメリットを紹介します。
【ビジネス・個人向け】コスパよくセキュアな通信を実現できる
VPNはコスパよくセキュリティを強化できるのがビジネス・個人向けどちらでもメリット。とくにビジネス向けではありがたいメリットとなっています。ビジネス向けにおいてセキュリティ強化をするメジャーな選択肢は専用線とVPNしかなく、専用線はコストが高いからです。
専用線の導入には数十万円、ランニングコストは月10万円以上。複数の拠点を接続するには拠点ごとに設置する必要があり、距離が離れていると回線を引くコストが膨大に。拠点間の距離によっても料金が大きく変わるため、見積もりを取らないと価格の予想がつけられません。
導入だけでも数十万円以上かかるため、費用対効果を考えると専用線は導入が難しいです。一方VPNは導入に3万円程度、ランニングコストが月1万~5万円程度なので、中小企業でも気軽に利用できます。
【ビジネス向け】どこからでもスマホ・パソコンを使って、安全に社内ネットワークに接続できる
VPNを使えば自宅のインターネット回線やカフェのWi-Fiからでも、安全に社内ネットワークに接続できるのがメリット。専用線を利用するには、拠点間ごとに専用線で結ぶ必要があります。テレワークのような個人の家や出先などでデバイスを使うときは、専用線は現実的ではありません。
会社の外から社内ネットワークにアクセスできれば働く場所を制限されないので、フットワークを軽くできます。営業職・テレワークの社員が多い会社でも、VPNなら導入しやすいです。スマホからもVPNを通して社内ネットワークを利用できるので、必要な資料を会社に忘れたときも安心です。
編集部
VPNを利用せずにフリーWi-Fiへ接続する危険性については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:フリーWi-Fi利用時はVPNを使った方がいい?危険性や必要な理由を解説!
【個人向け】海外のコンテンツを楽しめる
個人向けVPNサービスに限られますが、海外のコンテンツを楽しむことができます。一部のWebサービスは、海外からのアクセスを禁止・遮断していることがあり、その国に住んでいないと利用できないということがあります。「アメリカのWebサイトへアクセスしたいけど、日本国内からだとアクセスが遮断されている」というような例です。
そんなときに個人向けVPNサービスを使えば、日本国内にいるにもかかわらず、まるでアメリカからアクセスしているかのようになり、アメリカのWebサイトへアクセスが可能になります。
なぜ利用できるのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方は是非参考にしてみてください。
関連記事:VPNを使えばIPアドレスの国を変更できる!手順やメリットをご紹介
編集部
VPN接続のデメリット
VPN接続のデメリットは主に3つ。それぞれ詳しくご紹介します。
【ビジネス・個人向け】通信速度は向上しない
VPNは公衆回線を利用するため、アクセスが集中する時間帯は通信速度が遅くなってしまうのがデメリット。カプセル化の処理でサーバー・端末に負荷がかかり、速度が落ちるケースもあります。サイズの大きいデータを頻繁に送受信する場合はストレスが溜まります。
編集部
VPNの種類やサービスによっても通信速度・品質に差があるので、気になる方は通信速度・品質が安定したVPNを利用するようにしましょう。VPNの速度については、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
関連記事:在宅勤務の人も要チェック!VPNの速度が遅い理由と対処方法を解説!
【ビジネス・個人向け】情報漏洩のリスクは0ではない
VPNでデータを守っていても、サイバー攻撃を受け、情報漏洩の可能性は0ではありません。元々ウイルスに感染している端末でVPNにアクセスしてしまったり、VPN用ルーターなどの脆弱性を狙った攻撃をされてしまうと、ウイルス感染や情報漏洩してしまう可能性はあります。
とくに専用線に比べるとどうしてもセキュリティ強度が落ちるので、日頃からセキュリティリスクを把握して対策するのが大切です。具体的なセキュリティリスクは、以下の記事で解説しているのでチェックしましょう。
関連記事:VPNでセキュリティ強化ができる3つの理由!セキュリティソフトとの違いも解説
関連記事:Hola VPNの悪評は本当?安全性・使い方・料金・懸念点を徹底解説!
【個人向け】サービス・国によっては利用規約違反・違法になる可能性がある
個人向けVPNサーバーを利用する場合には、サービスや国によっては利用規約違反や違法につながる可能性があるため、注意が必要です。
個人向けVPNサーバーを利用すれば、海外からのアクセスの禁止といった規制を回避できます。しかし、そもそもそのWebサイトやWebサービスで「住んでいる地域外からVPN経由でのアクセスを禁止」と、規制されていることは少なくありません。
また、そもそも国によってはVPNを禁止しているところもあるため、VPNでのWebサービスの利用には細心の注意を払う必要があります。
詳細は以下の記事で詳しく紹介しているので、気になる方は参考にしてみてください。
関連記事:VPNでSpotifyを安く登録するのはルール違反?アカウント停止の可能性も
関連記事:VPN経由で楽天Vikiを視聴するのはNG?VPNを繋いでも見れない理由を解説
関連記事:VPNを使ってYouTubeプレミアムに安く入るのは違法?利用した際のデメリットも紹介
VPN接続のまとめ
VPNは安全にテレワークをしたり、拠点間で情報を送受信したりするのに欠かせないサービス。費用も安価で、気軽に導入できます。
- トンネリング
- カプセル化
- 認証
- 暗号化
これらの仕組みを理解し、効果・リスクを把握したうえでVPNを活用しましょう。