皆さんはカメラの「絞り」を自分で設定したことがありますか?
編集部
「なんか明るさが変わるらしい」とか「絞りはボケと関係があるらしい」とか、なんとなく聞いたことがあると思います。カメラの「絞り」を理解できるようになればもう脱初心者間違いなし!
この記事では、カメラの「絞り」について解説していきます。
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目次
カメラが写真を記録する仕組み
編集部
カメラの要となるレンズ
カメラのレンズは人間の眼でいうところの、水晶体の部分です。光がレンズに入るとうまく屈折して光を読み取るイメーイセンサーの部分に像を映し出してくれます。
中学校でも実像は上下左右が反対になったものがスクリーンに映し出される実験をやったことがあるかもしれませんが、これがレンズの役割です。
え?じゃあ写真は上下左右逆さまってこと!?って思うかもしれませんが、そこは裏のイメージセンサーとコンピュータで処理してくれているのでちゃんと処理してくれているんですね!
カメラって意外に賢い!
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絞りでカメラに入る光の量を調節(F値)
よく停電などで急に暗くなったりすると真っ暗で一瞬なにも見えなくなりますが、だんだん目が慣れてきて見えるようになったりすることがありますよね?
あれは目が勝手に瞳孔を大きく開いてくれるので暗いところでも見えたりします。逆にずっと暗いところにいたのに急に明るいところ出ると眩しくすぎて目がくらっとします。
あれも開きすぎた瞳孔のままで急に光の多いところに出たので、一気に光が目に入ってきて眩しく感じるのが原因です😅
この光の調節を行ってくれるのがこのカメラの絞りの部分です!仕組みから考えるとちょっとスッキリしますよね😁
光を認識するカメラのイメージセンサー
一眼レフやミラーレスはレンズから入ってきた光をイメージセンサーという部品で記録して、画像データ(写真)を記録します。フイルムからイメージセンサーに変わった、という点以外は100年前からこの仕組は変わっていません。
そのまま光を通すだけでは写真が明るすぎたり暗すぎたりするので、レンズやカメラ内にある部品で光の量を調整しています。具体的には「シャッター」と「ISO感度」、そして今回紹介する「絞り」の3つです。
この3つの要素を撮影者が(もしくはカメラが自動的に)調整することで、カメラのイメージセンサーに当たる光の量を多くしたり少なくしたりしています。
- シャッター
- ISO感度
- 絞り
今回は光量を調整する3要素のうちの一つ、「絞り」についてご紹介していきます。
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絞り(しぼり)ってどんな部品? 役割は?
絞りはカメラ本体ではなく交換レンズの中にある部品です。
レンズはカメラの中でも特に高い部品になることも多いのですが、絞りを繊細に調節できるものほど、表現の幅が広がります。
レンズの中の構造は瞳のような形
絞りは薄い金属の羽根を数枚組み合わせてできています。この羽根を調整することで中央の穴の大きさを変化させることが出来ます。
周囲の明るさに合わせて光の量を調節できる「絞り」
シャッターを切ると、光がこの「絞り」を通過します。この穴が大きければ通過する光の量が多くなりますし、小さければ少なくなります。
例を見てみましょう。左の図では、穴がとても小さく、レンズを通過してカメラに入る光の量が少なくなります。一方で右の図では、穴が大きいので光の量は多くなります。
つまり、
周囲が明るい
穴を小さくして通過する光の量を減らす
周囲が暗い
穴を大きくして通過する光の量を増やす
というわけです。ただし、穴を大きくするには限界があります(のちほど説明します)。
編集部
初心者は混乱しがち!?絞りやF値という用語を使いこなす
実際に絞りを調整する前に、絞りに関するいくつかの用語を説明していきます。
編集部
(絞りを)開く・絞る
先程まで穴を大きくする・小さくするという表現を使いましたが、実際には絞りを「開く」・「絞る」という表現を使います。
撮影の現場では「もう少し絞ったほうが良くね?」とか「絞りを開きすぎると良くないよ」みたいに使います。
F値(エフち)
こちらも、先程までは穴の大きさという表現を使いましたが、実際には「F値」という用語を使います。「それ今F値いくつで撮ってるの?」にように使います。
穴の大きさが大きい順に、F1.4、F2.0、F2.8、F4.0というふうに表記します。F値が小さいほど穴が大きい、ということに注意してください。
また、レンズによって使えるF値が異なります。詳しくは次の「開放F値」で説明します。
開放F値
一番小さいF値のことです。F値が小さいほど穴が大きいわけですから、開放F値が小さい=穴を大きくできる=暗いところでも余裕で撮影できる、ということになります。
高級なレンズほど開放F値が小さい傾向にあります。たとえばCanonの場合焦点距離が50mmのレンズを3つラインナップしていますが、開放F値の違いによって価格が全く異なります。
開放F値がF1.8のレンズは約2万円、それに対してF1.2のレンズはその10倍近い約19万円です(もちろんF1.2の方は開放F値以外にも優れているところはありますが)。
一眼レフと一緒についてきたレンズ(キットレンズといいます)は開放F値が大きい(F3.5からF5.6など)レンズであることが普通です。
実はレンズの開放F値はレンズに書いてあります!
左のレンズの場合はF2.8です。中望遠ズームレンズとしては小さめのF2.8です。
右のレンズはレンズの焦点距離(どれくらいズームしているか)によって、F3.5から5.6の間で開放F値が変化します。一番広角のときF3.5、一番望遠のときF5.6という具合です。キットレンズを含めやすいズームレンズだとよくある開放F値です。
編集部
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F値とぼけの関係を理解する
絞りを調整すると写真の「ボケ」にも影響があります。F値を小さくする(=絞りを開く)ほど背景がボケるようになり、F値を大きくする(=絞りを絞る)ほど背景までくっきり写るようになります。
なので一眼っぽいいい感じにボケた写真を撮りたいときにはF値を小さくし、背景までくっきりピントを合わせたいときはF値を大きくしましょう!
背景をぼかしたい
F値を小さくする
背景までピントを合わせたい
F値を大きくする
ただし、上に書いたとおり一番小さいF値はレンズによってそれぞれ決まっています。
最初から付属しているレンズなど、安いレンズではあまりF値を小さく出来ないので、さらに繊細な写真を撮りたいときにはレンズにもこだわってみるのをおすすめします😆
実際に絞りをいじってみる!
習うより慣れよ、ということで、実際にカメラの絞りをいじってみましょう!
ゴツいカメラで絞り優先の撮影をしてみよう!
- 撮影モードを絞り優先オート(NikonはAに、CanonとPentaxはAvに)セットする
- カメラのダイヤルを回して絞り値を変化させる。絞り値は背面液晶かファインダー内に表示される
ダイヤルの位置はメーカーや機種によってまちまちなので焦らないで!
- Nikon D5000系、D3000系の機種は右手親指の位置
- Nikon D7000系やそれ以上の機種は右手人差し指の位置
- Canon EOSは右手人差し指の位置
ダイヤルの位置は設定などによって変わることもあります。あと最近の機種はタッチパネルでわかりやすく操作できることもあります。
一眼レフやミラーレスを持ってないという方は以下のサイトで安くレンタルもできるのでまずはレンタルで試してみるのも初心者にはおすすめです!D5600なら1日あたり¥2,160円〜借りることもできます😆
絞りを調整すると写真の明るさが変わr…変わらない!?
さて、冒頭で
- 絞りを開くと通過する光の量が増えるので、写真が明るくなる
- F値によって写真の明るさが変わる
ということを書きました。でも実際に撮影してみると…
F3.5(開放)からF16まで絞りを調整しました。でも写真の明るさはほとんど変わっていません。
実は、この写真は「絞り優先オート」という設定で撮影したもの。この設定にすると、カメラが自動的にシャッタースピードを調整します。
なので、絞りを開いて光の量を増やしても、その分シャッタースピードを速くして光の量を減らすので、結果写真の明るさは変化しないのです。
逆に、マニュアル撮影モードにすると絞り値をいじってもシャッタースピードは変化しないので、絞りを開けば明るく、絞れば暗くなります。
また、絞り優先オートで撮影しているとき、F値を小さくするとその分シャッタースピードが高速になりますが、小さすぎるとシャッタースピードの限界(1/4000〜1/8000秒)を振り切ってしまい、適切な明るさにならないことがあります。
逆も然りでF値を大きくするとその分シャッタースピードが低速になりますが、大きすぎるとシャッタースピードが遅くなりすぎて、手ブレの原因にもなります。
ちなみにどちらの場合も、ISO感度を調整してやれば解決できます!
ISO感度とは?これを理解すればノイズを減らせます!絞り優先オートの場合
F値(絞り値)を変えても明るさは変化しない(カメラが自動的に調整)
マニュアル撮影モードの場合
F値(絞り値)を変えると明るさが変化する
絞り(F値)が画質に影響を与える?
カメラやレンズのレビューサイトをのぞくと
絞りを絞りすぎると画質が悪くなる。F○○以上は使わないほうがいい
絞り開放では画質が悪いが1段絞ると改善する
というようなことがよく書いてあります。絞り値(F値)によって画質が良くなったり悪くなったりするのでしょうか?
実は、F値が小さすぎたり大きすぎたりすると画質が落ちます。
詳しい説明は端折りますが、F値が小さいとレンズの周辺部まで使うことになります。
こうなるとレンズは中央部ほど高精度という特徴があるので、特に開放で撮影すると全体がぼやけたような写真になってしまいます。
一方でF値が大きすぎてもダメで、回折現象が起きて全体的に描写が甘くなってしまいます。
「じゃあ絞りは絞りは開けすぎても絞りすぎても良くないの?」「一番画質がいいF値はいくつ?」となるのはよっと早いです😅
正直に言って、ほとんどの場合、絞りが画質に与える影響は無視してもいいレベルです。なのでその時その時で好きな絞り値(または最適な絞り値)を選べばいいのです。
むしろ、「このレンズの最適なF値は○○だ」みたいに、どんな状況でも絞り値を一定にして撮影するのでは、一眼レフやミラーレスの楽しみ・利点が一つ消えてしまいます。
これだとせっかく一眼レフを買ったのに少しもったいないです!
絞り(F値)を調整して撮影した例
カメラの撮影モードを「絞り優先オート」または「マニュアル」に設定して撮影してみました。
たかし先生
F値は「F2.0(開放)」。手前の花にだけピントが合い、それ以外の部分は思いっきりボケています。
風景全体にピントを合わせたかったのでF値は「F8.0」。風景写真では絞って撮影するのが普通です。
夜のタクシーの車窓から撮影、F値は「F2.0」。夜のような暗いシーンでは手ブレ・ノイズを減らすためにF値を小さくせざるをえません。
こちらは真夜中に撮影しましたがF値は「F16」です。シャッタースピードを長く(この場合は約60秒)するためには絞りを絞る必要があります。
まとめ
「絞り」って、正直とっつきにくい要素だと思いますが、上の作例のような「背景がボケた写真」や「全体がくっきり写っている写真」を撮影するためには必要不可欠な知識です。
是非、「絞り」を身につけて、もっとを楽しんでみてください😆
- 絞りはレンズを通過する光の量を調整するしくみのこと
- F値が小さい(絞りを開く)と光の量が多く、F値が大きい(絞りを絞る)と光の量が少なくなる
- F値が小さいほどボケた写真になる
- 状況に応じて適切なF値を選択する必要がある
あわせてシャッタースピードについて知っておくと、カメラについてもっと理解できます。
シャッタースピードを理解することで、一眼レフで美しく・確実に写真を撮る!