VPNはインターネット上での匿名性を高め、データの安全性を確保し、地域制限のかかったコンテンツにアクセスするための便利なツールです。
通常VPNは最低でも月額数百円以上はかかるサブスク契約が必要なため、無料で提供されているVPNサービスは初心者にとって非常に魅力的です。ただ、無料VPNにはコスト面でのメリットと同時にいくつかのリスクがあります。
速度が遅いことやデータ制限があるだけでなく、セキュリティの脆弱性や悪質な業者による個人情報の不正利用の可能性も存在します。信頼性の低い無料VPNを利用すると、個人情報が漏洩したりするだけでなく、最悪のケースとしてマルウェアなどのウィルスを仕込まれるといった危険性もあるので細心の注意が必要です。
そのためこの記事では無料VPNを紹介する前に、利用してはいけないタイプの無料VPNに関して説明していきます。おすすめの無料VPNサービスをすぐに知りたい方は目次から「無料で使えるVPN3選」までお進みください。
無料VPNのタイプについて
無料VPNですが、大きく分けて3つのタイプがあります。
- 有料サービスの大部分の機能を制限したタイプ。速度や容量の制限が厳しい。
- 有料サービスの期間限定のお試し版。大体30日程度のお試し期間が多い。
- 制限なしで無料で使えるサービス。広告などが大量に付くケースも多い。
気を付けた方がいい無料VPNは3のタイプです。こちらのタイプは悪質なものが混じりやすいので注意が必要です。
無料VPNの危険性とは
無料VPNの中には、十分なセキュリティ対策が施されていないものがあり、脆弱な暗号化方式を採用し続けている場合があります。その場合せっかくVPNを利用しているにもかかわらず、通信内容が漏れてしまう可能性があります。
またログポリシーなどが曖昧で、ユーザーの通信ログを保存してしまっているケースもあります。ログには、閲覧したサイトや利用したサービスなどの情報が含まれる可能性がありますのでプライバシー保護の観点からもマイナスとなります。
ForbesJAPAN:中国製「無料VPNアプリ」でデータが盗まれる危険、専門家が指摘
上記は単純にサービスや技術が不完全な場合に起こるケースですが、無料VPNを提供している業者の中には悪意をもって運営している場合があり、そういう無料VPNを利用することは非常に危険です。
悪意のある業者が運営するVPNを利用すると、個人情報を勝手に売買されたり、アプリを通じてデバイスにマルウェアを仕込まれたりすることがあります。自身の個人情報が盗まれるだけならまだしも、犯罪に利用されることで、深刻な被害を受けることもあります。
Google PlayストアやApple Storeで合計1億回以上ダウンロードされていた無料VPNであるSuperVPNでさえも、ユーザーのクレジットカード情報を危険に晒していたり、マルウェアが仕組まれていたという報告もあります。
CPO MAGAZINE:Free VPN Data Leak Exposed Over 360 Million User Records(翻訳 – 無料 VPN データ漏洩で 3 億 6,000 万件以上のユーザー記録が流出)
無料で使えるVPN3選
Proton VPN
Proton VPNはスイスのVPNサービスで、セキュリティ・プライバシー保護がしっかりしているので、無料VPNを使う場合は一番おすすめです。
無料プランについて:お試し期間タイプではなく、機能を制限した無料プランとなります。1台のデバイスまでとなりますが、広告なしで無料で使えるのは非常に魅力的です。時間・速度・データ容量の制限は無いとしていますが、有料プランに比べて無料プランは全体的に遅くなっています。
サーバー:有料プランにおけるサーバーの設置国は91ヶ国以上でサーバー数は1,000台以上保有していますが、無料プランでアクセスできるサーバーが5つ(日本・アメリカ・オランダ・ポーランド・ルーマニア)のみとなっています。
なお現在は無料プランではサーバーを手動で選択することはできずに、自動で最適なサーバーに接続されます。サーバー設置国やサーバー数が少ないのはマイナスですが、日本とアメリカのサーバーを利用出来るのは有難いです。
セキュリティ:無料プランでもキルスイッチ、AES-256 暗号化、OpenVPNとWireGuardの両方のプロトコルへのアクセスが可能となっている点は非常にGoodです。
無料プランでも標準的なセキュリティ機能がすべて備わっており、本拠地があるスイスはデータ保持関連が緩めな国なのでプライバシー保護の面からも高評価です。
TunnelBear VPN
TunnelBear VPNはニューヨーク・タイムズ社が運営するレビューサイトであるWirecutterにおいて、セキュリティ・透明性・使いやすさの点からおすすめされたこともあるVPNです。
無料プランについて:無料版では1か月あたり2GBまでのデータ制限となっていますが、2GBのみのため、通常利用というよりはお試し利用に近い形になると思います。同時接続については無料プランでも5台まで使えるため、複数のデバイスで使える点は良いと思います。
サーバー:無料と有料で違いが無いため、無料プランでも40か国以上のサーバーが利用できます。これは無料VPNの中ではトップクラスとなっています。
セキュリティ:無料プランでもキルスイッチ、AES-256 暗号化があります。またTunnelBearは毎年第三者によるセキュリティ監査を実施している点も高評価です。
関連記事:TunnelBear VPNの評判や安全性は?無料プランと有料プランの違いも解説!
Hide.me VPN
Hide.me VPNはマレーシアを拠点とするeVenture Limitedの子会社です。無料VPNの中では使える容量が多いのが特徴ですが、無料プランの速度はかなり遅いため、ゲームなどには向いていません。
無料プランについて:無料で使えるデータ容量が毎月10GBと、ライバルに比べてかなり多くなっているのがポイントです。ただし速度制限がかなり厳しいため数十Mbpsまでしかでないことが多く、同時接続できるデバイスも1つのみとなっています。
サーバー:サーバーはアメリカ、カナダ、ドイツ、オランダなど8拠点にあります。
セキュリティ:ログなしポリシー。WireGuardをはじめとした有料プランと同様の保護と暗号化を無料プランでも利用可能。また、無料アカウントを作成するときにクレジットカードなどの支払い情報を要求しない点もポイントです。
お試し期間のあるVPN2選
Picky’sでおすすめしている有料VPNのExpressVPNとNordVPNはそれぞれ30日間の返金保証があるため、無料お試しとして利用することが可能です。
どちらも安全性・スピードともに優秀なVPNとなっています。
ExpressVPN
速度・セキュリティの強固さに加えて、アプリのUIが使いやすく、スマホで利用したい方にもおすすめしたいVPNです。全てのプランにおいてパスワードマネージャー・トラッカーブロック・広告ブロックが利用可能です。
総合的に最も優秀なVPNで、海外の大手メディアForbesやCnetのレビューテストにおいても1位を獲得している世界的に人気のVPNサービスです。
すべてのプランに30日間の返金保証が付いているので、お試しでの利用がしやすくなっています。
NordVPN
NordVPNはExpressVPNと並ぶ海外VPNサービスの最大手であり、回線速度も速く海外コンテンツのブロック解除だけでなくプライバシー保護の面からも優秀なサービスです。
一度に10台のデバイスまで保護可能。月額料金は550円から利用することが出来ますし、プランをアップグレードすることで、パスワード マネージャーや広告ブロッカーの機能を追加することもできます。
NordVPNもExpressVPNと同様に30日間の返金保証が付いているので、お試しでの利用が可能です。
無料VPNの選び方
無料VPNを選ぶ際には、以下のポイントを重視しましょう。
- 提供元の信頼性: 運営会社の実績や評判を確認します。公式サイトやレビューサイトで透明性のある運営かどうかをチェックしてください。
- データ制限の有無: 無料VPNは多くの場合、利用可能なデータ量に制限があります。利用目的(例:ブラウジング、動画視聴)に応じて適切なサービスを選びましょう。
- 広告表示: 一部の無料VPNは広告を挿入します。広告の有無や頻度を事前に確認し、利便性に影響がないものを選ぶのがおすすめです。
- 対応プラットフォーム: 使用するデバイス(PC、スマホ、タブレットなど)に対応しているかを確認しましょう。
特に重要な「安全性を判断するための基準」としては、下記のポイントが大事です。
- 暗号化技術の有無: 信頼できるVPNは、AES-256などの高度な暗号化技術を採用しています。これが記載されていない場合は避けたほうが良いでしょう。
- ログポリシー: 「ログを保存しない(No-Log Policy)」を明示しているVPNを選びましょう。ただし、無料サービスの多くはログを収集する場合があるため、プライバシーポリシーを確認してください。
- 評判やレビュー: 独立したレビューサイトやユーザーフィードバックを確認することで、安全性や利用者の満足度を判断できます。
- オープンソースの信頼性: 一部のVPNはオープンソースで開発されており、技術の透明性が確保されています。
無料版と有料版の機能の違い
1. 通信速度
無料VPN:多くの場合、通信速度が遅く、動画視聴やオンラインゲームなどには不向きです。サーバーの混雑状況や利用制限の影響を受けやすく、快適な利用が難しい場合があります。
有料VPN:高速な通信速度を提供しており、動画視聴やオンラインゲーム、大容量ファイルのダウンロードなどにも快適に利用できます。
2. データ容量
無料VPN:利用できるデータ容量に制限があることが多いです。制限を超えると、速度制限がかかったり、利用できなくなったりします。
有料VPN:無制限のデータ容量を提供しているサービスがほとんどです。データ容量を気にせず、自由に利用できます。
3. サーバー数・接続台数
無料VPN:利用できるサーバー数が少なく、希望の場所にあるサーバーに接続できない場合があります。また、同時接続台数も1台のみに制限されていることが多いです。
有料VPN:世界中に多数のサーバーを設置しており、希望の場所にあるサーバーに接続できます。また、同時接続台数も複数台使えるか制限がない場合がほとんどで、複数のデバイスで同時に利用できます。
機能面以外だとサポート面と広告の有無があげられます。
基本的に無料VPNは有料VPNと比べてサポート体制が充実していない場合が多いため、問題が発生した場合は自分で解決する必要があります。また無料VPNは広告が付く場合が多いので、使い勝手や快適性の面は劣ることが多いです。
無料VPNの利用時の注意点
無料VPN利用時に個人情報を扱わない
無料VPNは、有料サービスに比べて運営元の信頼性が低い場合があります。
一部の無料VPNはユーザーの個人情報や接続履歴を収集し、広告目的や第三者に提供するリスクが高いです。そのため、無料VPNを利用する際には、クレジットカード情報、パスワード、住所などの個人情報を入力したり送信したりすることは避けましょう。
また、オンラインバンキングや重要な取引には無料VPNを使用しないことをお勧めします。
セキュリティに気を付ける
残念なことに暗号化のレベルが低かったり、まったく暗号化されていないものも存在します。このような場合、通信が第三者に傍受されるリスクがあります。
また無料VPNを偽装した悪意のあるアプリも存在するため、利用するVPNの提供元や評判を事前に調べることが重要です。特にセキュリティソフトを入れていない場合はより注意して、安全にインターネットを利用できる環境を整えましょう。
速度制限
利用者が多い場合にサーバーが混雑し、通信速度が大幅に低下することがあります。また、帯域幅やデータ量に制限が設けられている場合もあり、長時間の利用や動画視聴には適さないことが一般的です。無料VPNを利用する際は、あらかじめ速度やデータ量の制限を確認し、用途に応じて使い分けることが大切です。ストレスなく利用したい場合は、有料VPNの導入も検討してみましょう。