NAS用HDDは、NAS環境向けに最適化されたHDDのことです。NAS環境は一般的なPC使用時とは異なりHDDに高い負荷がかかるため、NASには、NAS用HDDの使用をおすすめします。
ですが、詳しくない方は「どれがNAS用HDDなのか」「一般的なHDDとどう違うのか」で迷ってしまいますよね。
そこで当記事では、NASに最適なNAS用HDDについて解説します。NAS用HDDと一般的なHDDの違いや、実際に選ぶ際のポイント、おすすめメーカーと製品も紹介します。
NASやRAID環境を構築しようと思っている方はぜひ参考にしてください。
目次
NAS用HDDとは?普通のHDDとの違い
NAS用HDDは、NASで使用するために主に耐久性能を強化したHDD、要は「ハードな環境でも壊れにくい頑丈なHDD」です。
NASは複数のユーザーからの同時アクセスや24時間365日稼働するケースが多いため、HDDには強い負荷がかかります。また、NASは複数のHDDを近接稼働させるため、強い振動や放熱の影響を受けやすく、故障リスクも高まります。
そのため、一般的なHDDをNASで使用した場合、故障頻度が高くなったり寿命が短くなる可能性があります。
そんな過酷なNAS環境で使用するために、NAS用HDDは一般的なHDDよりも耐久性や稼働時間を高め、また振動・熱対策を施して安定性を高めています。
- MTBF (故障するまでの平均的な期間)が長い
- 年間稼働時間(1年にどれだけ通電できるか)が長い
- 保証期間が長い(NAS用HDDは3年が基本)
- 動作温度が広めに設定されている
- 独自の振動対策が施されている製品が多い
耐久性能が高く、振動対策を施したNAS用HDDであれば、複数同時アクセスや常時通電による負荷にも耐えられます。
性能が高い分一般的なHDDより若干割高にはなりますが、NASを使用する環境、特に事業で使用する場合は大事なデータを守るためにもNAS用HDDがおすすめです。
NAS用HDDの選び方
NAS用HDDを選ぶ際のポイントを解説します。
用途に合わせて容量を選ぶ
一番最初に、データを保存できる容量を選びましょう。NAS用HDDの容量は主に1TB~24TBが販売されています。
個人で大量のデータを保管する目的であれば2TB~4TBがおすすめです。法人が使用する場合は4TB~12TB、規模や用途によってはそれ以上の容量のモデルを選びましょう。
編集部
速度重視か負荷低減重視かで回転数を選ぶ
NAS用HDDの回転数には7200rpmと5400rpmの2種類があり、それぞれ特性が異なります。
アクセス速度 | 消費電力 | 音の大きさ | |
7200rpm | より速い | 高い | やや大きめ |
5400rpm | 速い | 低い | 静か |
7200rpmは高速回転する分アクセス速度が向上しますが、一方で消費電力が高く音もやや大きいデメリットがあります。
5400rpmは7200rpmより回転数が遅いためアクセス速度は低くなりますが、負荷がかかりにくいため消費電力が低く、静音性が高いのがメリットです。
個人の場合は電力消費と音が小さい5400rpm、事業用であれば速度が速い7200rpmを選ぶのがいいと思います。メーカーによっては可変回転数の仕様もあるため確認してください。
MTBF (平均故障間隔)が100万時間以上あるものを選ぶ
HDDにはMTBF (平均故障間隔)があり、この数値が大きいほど故障しにくく信頼性が高くなります。NAS用HDDを選ぶ際は、このMTBFが100万時間以上ある製品を選んでください。
NAS用HDDの多くはMTBFが100万時間以上に設定されているため、「NAS用HDD」として販売されている製品を選べば間違いありませんが、念のため確認しておきましょう。
高額なNAS用HDDでは、MTBFが120万時間や200万時間と非常に高い製品もあります。
もちろんMTBFが120万時間や200万時間あればより安心ですが、高額であったり、容量が非常に大きなHDDに限定されているケースが多いです。
なお、似た指標にMTTF(平均故障時間)があり、製品によってはMTTF表記のものがありますが、意味合いとしてはほぼ同じです。こちらも100万時間を基準に選んでください。
編集部
保証期間の長さもチェックしよう
一般的なHDDに比べて強い負荷がかかるNAS用HDDは、保証期間の長さも重要です。保証期間が長ければ長いほど製品品質の一つの目安になります。
大手メーカーのNAS用HDDの多くは3年、もしくは5年保証です。従って、3年あれば間違いありません。
製品によっては、故障時に中のデータを復元するデータ復旧サービスを付帯している製品もあります。
安いVS 高い!NAS用HDDの価格の違いを比較
NAS用HDDは、1万円台で買える製品から10万円を超える製品まであり、価格帯もバラバラです。ここでは、安いNAS用HDDと高いNAS用HDDの違いについて解説します。
NAS用HDDの価格を決める最も大きな要因が「容量」です。基本的に容量が大きければ大きいほど高額になります。
また、高額なNAS用HDDはMTBFや保証期間がさらに長く、より振動に強い設計になっていて全体的に性能や耐久性が高い製品も多いです。
編集部
安いNAS用HDDの特徴(1万円~3万円前後のモデル)
- 容量は1TB~4TBあれば十分
- 個人や小規模事業用
- そこまでハードな使用環境ではない
1~3万円のNAS用HDDは、1TB~4TB前後の製品がほとんどです。そのため、個人で使用する場合や、法人でもさほど多くのデータ容量を必要としない場合に適しています。
メーカーによっては3万円台でも8TB前後の容量が選べたり、容量を下げればより耐久性能の高い製品も選べるため、予算と相談しながらいろいろ探してみてください。
1~3万円台の安価な製品でも一般的なHDDより耐久性に優れているため、ある程度ハードな使用環境にも対応できます。
24時間365日絶えず複数ユーザーからアクセスがある環境の場合は、価格にこだわらずより耐久性の高い製品を選んでください。
高いNAS用HDDの特徴(3万円以上のモデル)
- 8TB以上の大容量が必要な方
- NASを24時間365日体制で使用している
- 中規模~大規模な事業用・業務用として使用したい
3万円以上のNAS用HDDは、8TBや12TB以上の大容量モデルが選べます。そのため、大容量のHDDを必要とする法人におすすめです。
また、MTBF・年間稼働時間・保証期間が長くより高耐久なモデルも選べるため、複数のユーザーが24時間365日アクセスするような環境で使用する場合も安心です。
NAS用HDDのおすすめ人気メーカー
NAS用HDDのおすすめメーカーを紹介します。NAS用HDDを販売しているメーカーは多くないため、以下の大手3メーカーの製品を選べば間違いありません。
編集部
HDDと言えば「Western Digital(ウエスタンデジタル/WD)」
ウエスタンデジタルはアメリカのストレージ企業で、HDDの市場ではシーゲートと並び世界シェアトップの企業です。
ウエスタンデジタルのNAS用HDDは、「WD Red」という製品名で販売しています。WD Redシリーズは、用途によって3種類から選べます。
- 小規模や個人ユーザー向け「WD Red」
- 高性能を求めるユーザーや中小規模事業向け「WD Red Plus」
- 大規模ビジネス向けハイパフォーマンスの「WD Red Pro」
WDのNAS用HDDはラインナップの広さだけではなく、厳しい振動対策や耐久試験をクリアしており、耐久性・信頼性が高く長時間安定して動作します。
また、性能や耐久性に対するコスパも非常に高いため、幅広い製品の中から選びたい方、性能を重視する方などあらゆるユーザーにおすすめです。
データ復旧サービス付きで安心して使える「Seagate(シーゲート)」
シーゲートは、ウエスタンデジタルと並びHDD市場では世界シェアトップのストレージ企業で、NAS用HDD「IronWolf」シリーズを展開しています。
HDD最大メーカーだけあり、IronWolfもラインナップが豊富で耐久性も抜群です。HDDメーカー選びで迷ったら、シーゲートか先ほど紹介したウエスタンデジタルを選んでおけば間違いありません。
なお、IronWolfには3年間のRescueデータ復旧サービスが付帯しているため、大事なデータも安心して保存できます。
国内メーカー派におすすめの「東芝(TOSHIBA)」
東芝は、「N300」「N300 Pro」「MN」3つのNAS用HDDを販売しています。「N300」は「MN」の実質的な後継モデルで、より高い耐久性・安定性を備えているため、基本的には「N300」の中から希望する容量を選べば問題ありません。
「N300」は記録方式CMR、回転数7200rpm、MTTF・MTBFは100万時間~120万時間と非常に高性能なHDDで、どんなユーザーや法人にもおすすめです。
「N300 Pro」は非常にハイスペックなモデルで、必要なユーザーは大規模なNASシステムを構築している法人などに限定されます。
NAS用HDDおすすめ人気ランキング比較一覧表
商品 | 最安価格 | サイズ | 重量 | インターフェース | 容量 | 回転数 | MTBF (平均故障間隔) | 保証期間 | その他 | |
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![]() | [Western Digital] WD Red Plus 内蔵HDD 6TB CMR 3.5インチ SATA NAS メーカー保証3年 | ¥22,580 Amazon楽天市場Yahoo! | 146.99x101.6x26.11mm | 750g | SATA | 6TBほか | 5400rpm | 100万時間 | 3年 | RVセンサー搭載 |
![]() | [Seagate] IronWolf 3.5インチ データ復旧 3年付 8TB 内蔵HDD CMR 3年保証 | ¥30,400 Amazon楽天市場Yahoo! | 101.85×146.99×26.11mm | 690g | Serial ATA | 8TBほか | 5400rpm | 100万時間 | 3年 | RVセンサー搭載/データ復旧3年付き |
![]() | [東芝] N300シリーズ NAS HDD 6TB(CMR) 3年保証 N300A06 RVセンサー搭載 | ¥25,939 Amazon楽天市場Yahoo! | 147×101.85×26.1mm | 710g | Serial ATA600 | 6TBほか | 7200rpm | 100万時間 | 3年 | RVセンサー搭載 |
![]() | [Western Digital] WD Red NAS HDD 1TB RAID 3.5インチ 内蔵HDD WD10EFRX | ¥11,158 Amazon楽天市場Yahoo! | 147x101.6×26.1mm | 490g | SATA 6 Gb/s | 1TBほか | 5400rpm | 100万時間 | 3年 | RVセンサー搭載 |
![]() | [Western Digital] WD Red Pro 4TB WD4003FFBX SATA3.0 7200rpm 256MB 5年保証 | ¥26,566 Amazon楽天市場Yahoo! | 147x101.6×26.1mm | 720g | SATA | 4TBほか | 7200rpm | 200万時間 | 5年保証 | RVセンサー搭載 |
NAS用HDDおすすめ人気ランキング5選
小規模なNAS環境で信頼性を求めるならWD Red Plus
WD Red Plusは、ウエスタンデジタル社のNAS用HDDのミドルスペックモデルです。
耐久性能が高いにもかかわらず消費電力は低く抑えられているため、耐久性や信頼性を重視する個人ユーザーや小規模な事業所向けとしておすすめです。RAID環境にも対応しています。
また、HDDの振動による障害を事前に予測し発生を防ぐ回転振動センサー(RVセンサー)が搭載されています。保証期間も安心の3年間です。
容量は、6TBのほか、2TB・4TB・8TB・12TB・14TB・16TB・18TB・20TB・22TB・24TBがあります。
サイズ | 146.99x101.6x26.11mm |
---|---|
重量 | 750g |
インターフェース | SATA |
容量 | 6TBほか |
回転数 | 5400rpm |
MTBF (平均故障間隔) | 100万時間 |
保証期間 | 3年 |
その他 | RVセンサー搭載 |
3年間データ保証サービス付きで、長く安心して使えるHDD
IronWolfは、8ベイまで対応可能なシーゲート社のNAS用HDD製品です。
MTBFは100万時間、振動を察知するRVセンサー搭載と、NAS向けHDDに求められる耐久性や品質は完璧にクリアしています。
さらにIronWolf独自のサービスとして、3年間のデータ保証が付帯。万が一3年以内に中のデータが破損した場合、無料でデータ復旧サービスが受けられます。
選べる容量は1TB・2TB・3TB・4TB・6TB・8TB・10TB・12TB・14TB。
大事なデータを安全に保存したい中規模NASや個人ユーザーにおすすめです。
サイズ | 101.85×146.99×26.11mm |
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重量 | 690g |
インターフェース | Serial ATA |
容量 | 8TBほか |
回転数 | 5400rpm |
MTBF (平均故障間隔) | 100万時間 |
保証期間 | 3年 |
その他 | RVセンサー搭載/データ復旧3年付き |
512MBキャッシュで安定&高速読み書きが可能
東芝のNAS用HDD「N300シリーズ」のN300A06は読み書きが早く、また安定した記録が可能なHDDです。
6TBの容量に対してキャッシュが512MBあり、記録方式は安定したCMR方式を採用。回転数は高速の7200rpmでRVセンサーも搭載。
速度・安定性・耐久性どれをとっても欠点らしい欠点がなく、どんな状況でも安心して使用できます。
サポートベイ数は8ベイ、容量はこのN300A06(6TB)のほか、4TBから22TBまで2TB刻みで選べるため個人から中規模事業まで幅広い用途に最適です。
サイズ | 147×101.85×26.1mm |
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重量 | 710g |
インターフェース | Serial ATA600 |
容量 | 6TBほか |
回転数 | 7200rpm |
MTBF (平均故障間隔) | 100万時間 |
保証期間 | 3年 |
その他 | RVセンサー搭載 |
安価で高性能な個人・小規模NAS環境におすすめなHDD
WD Redは、ウエスタンデジタルのNAS向けHDDの中でも最も安価なシリーズで、8ベイまでの個人や小規模なホームオフィスのNASに最適です。
安価と言っても、MTBF (平均故障間隔)は100万時間あり、動作保証温度も広く設定されています。もちろん回転振動センサー(RVセンサー)も搭載しています。
一般的なHDDよりもはるかに高耐久でNASに最適化されているため、24時間365日稼働する環境でも十分に性能を発揮してくれるでしょう。保証期間も3年間あり、安心して使えます。
容量は、1TBのほか2TB・3TB・4TB・6TB・8TB・10TB・12TB・14TBです。
サイズ | 147x101.6×26.1mm |
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重量 | 490g |
インターフェース | SATA 6 Gb/s |
容量 | 1TBほか |
回転数 | 5400rpm |
MTBF (平均故障間隔) | 100万時間 |
保証期間 | 3年 |
その他 | RVセンサー搭載 |
大規模NAS環境向けハイスペックNAS用HDD
WD Red Proは、ウエスタンデジタルのNAS向けHDDの中で最も高性能なHDDです。
高額な分性能は圧倒的で、MTBF (平均故障間隔)も他のWD Redシリーズが100万時間なのに対し、Proは4TBモデルでも200万時間と非常に長寿命。保証期間も5年に設定されてます。
まさにハイパフォーマンスHDDと呼ぶにふさわしい性能です。
最大24ベイまで対応し、容量も2TBから最大26TBまで選べるため、24時間365日多数のユーザーがアクセスするような大規模なNAS環境におすすめ。
サイズ | 147x101.6×26.1mm |
---|---|
重量 | 720g |
インターフェース | SATA |
容量 | 4TBほか |
回転数 | 7200rpm |
MTBF (平均故障間隔) | 200万時間 |
保証期間 | 5年保証 |
その他 | RVセンサー搭載 |
NAS用HDDに関するよくある質問
最後にNAS用HDDに関するよくある質問をQ&A方式でまとめました。
NASに一般的なPC用HDDを使っても問題ない?
例えば、NASであっても一般的なパソコンと同じアクセス頻度や稼働時間で使用するのであれば、一般的なHDDを使用してもすぐに重大なトラブルにつながることは無いでしょう。
ただ、一般的なHDDを使用して複数の同時アクセスや連続稼働で高い負荷をかけ続けた場合、故障リスクが高くなったり寿命が短くなる可能性があります。
また、振動対策や熱対策もされていないため、HDD同士の振動や放熱の影響も強く受けてしまいます。その結果、寿命だけではなく性能にも影響してくるかもしれません。
これからNASを構築しようとしている方、構築している方はおそらく大事なデータの保存を目的にしている方が多いと思います。
NAS用HDDと一般的なHDDで何倍も価格が変わるわけではないため、大事なNASのデータを守るためにもNASには専用のHDDを使用しましょう。
逆に、一般的なデスクトップPCにNAS用HDDを使用するのは問題ない?
ただ、NAS用HDDは一般的なHDDよりも割高です。また、NAS用HDDは性能よりも耐久性を重視しているため、一般的なHDDに比べて読み書き速度が遅くなる場合もあります。
さらに製品によっては音が大きくなったり、消費電力や発熱量も高くなるため、耐久性と引き換えに価格の高さや電力消費の高さと言ったデメリットを許容できるかどうかを考えて選んでください。
CMRとSMRってなんですか?
CMRは一般的な記録方式で、安定した読み書きが可能で信頼性が高い記録方式です。
一方SMRは新しい書き込み方式で、従来のCMRよりコストが安く、さらに記録密度の高い記録ができますが、CMRに比べてパフォーマンスが低下します。
書き込み頻度が少ないアーカイブの記録であれば、安価で買えて記録密度の高いSMRでもいいでしょう。ただ、一般的な用途であれば安定したCMR方式がおすすめです。
NASをフル活用するならNAS用HDDがおすすめ!
NAS用HDDは、過酷な使用環境に耐えられるよう耐久性を重視した設計のHDDです。
- NAS用HDDは複数アクセスや24時間365日使用に強い
- NASやRAID環境にはNAS用HDDがおすすめ
- ウエスタンデジタル・シーゲート・東芝製を選べば間違いない
特に事業でNASを使用する場合は、大事なデータを故障リスクから守るためにも安全性の高いNAS用HDDを使用しましょう。
製品数は決して多くないため、ポイントを押さえておけばNAS用HDDの選び方は決して難しくありません。これからNASを構築しようと思っている方はぜひ検討してみてください。
Picky’sでは、ほかにもHDDやSSDに関する記事を多数執筆しています。大事なデータを保存するなら、以下の記事もぜひ読んでみてください。
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