- 風景写真に必要な準備
- 風景写真における撮影設定
- 風景写真撮影時にこだわりたいこと
皆さんは、どのような時に写真を撮りますか?何かの記念、決定的瞬間、データの記録など、写真をとる理由は数多くあります。
中でも、最も多く普遍的な写真を撮る動機は、「美しい景色を残したいから」ではないかと私は思います。その典型が今回お話する風景写真になります。
旅先で見た景勝地の風景、ドラマチックな朝焼けや夕焼け、変化する自然の表情など、世界には様々な美しい風景が存在しています。
目に映った風景を美しいままに、また目に映る以上に美しく写真に残すためのテクニックや考え方をお話していきたいと思います。
目次
一眼レフで撮る風景の構図と表現の考え方のコツ
美しい風景写真・・・とは
写真に感じる美しさは人によって異なります。例えば、好きな色、被写体、画角、構図など、風景写真は様々なあなたの好きな要素を盛り込むことで、あなたの風景写真が完成します。
それらの要素の普遍的な扱い方を学び理解することで、誰もが美しいと感じられるような風景写真を撮ることができるようになります。
王道の風景写真
青い空と富士山、そしてカラマツの黄葉を取り入れた典型的な風景写真です。遠く少しかすんだ富士山と朝日に染まる雲海、穏やかな山並み、そして朝日を受けて黄金色に輝く手前の山肌へと視線が移り行くような構図となっています。
このような視線誘導があると風景写真はより味わい深いものになります。
奥行きの出し方
奥行きを感じる写真は、見る人を引き込むような魅力があります。そんな写真を目指したいときに意識したいのが、遠景と中景、近景の配置です。
この作例の場合、手前の花壇と梅の花あたりまでが近景(前景)、ドーム状の建造物が中景、奥の町並みから山並みが遠景(後景とも。)となりますピントは建造物に合わせており、手前の花がボケて柔らかい色のアクセントになっており、一番奥の山並みも少しぼやけて写真全体で遠近感が強調され奥行きのある画に仕上がっています。
縦構図にすることも奥行き・遠近感を出すポイントです。
人物を入れる
滝を裏側から撮影した一枚です。最初は人物なしで撮影したのですが、スケール感が伝わりづらいと感じたため同行者に写ってもらいました。
人という分かりやすい大きさの基準を入れることでぽっかりと空いた滝裏の洞窟のスケール感をダイナミックに表現することが出来ました。
被写体の「方向」と「間」
多くの被写体は、向きを持っています。この鳥居の場合はこちらから見て左側を向いています。被写体の向いている方向に間を設けることで写真に安定感が生まれます。
この場合、鳥居の左側は特に目立ったものの無い林の広がる空間が配置され、写真全体のバランスがとれています。
もし、この左側を向いた鳥居が画面左側に配置された場合、バランスの無い窮屈な画になってしまっていたでしょう。
風景写真、ゴールデンタイムのススメ
日の出・日没の前後数十分間には、ブルーアワー、マジックアワー、トワイライトタイムなど様々な呼び方があり、最も風景が印象的に美しく色づく時間帯となります。
特に日の出前のブルーアワーは、青く空気が染まる風景と赤く染まり始めた地平線のコントラストが非常に美しいものとなります。
頑張って早起きして撮影地に赴き、幻想的な風景を撮影するのもまた風景写真の一興です。
一眼レフの風景撮影は光が重要!光で表現する絶景写真
風景の印象に最も深く関わっているのが、太陽光をはじめとする光のコンディションです。風景を映し出す光を読み解くことで、より風景に対する理解が深まります。ここでは風景をはじめとする写真撮影においてどのような種類の光があるのか説明していきたいと思います。
順光
順光は、被写体に対して正面から当たる光のことです。日中に撮影者の背中側に太陽がある状態です。
順光によって写し出される被写体は発色が良く、見やすいコントラストで被写体が写し出されます。最も自然な印象が得られる光の状態となります。
真正面から当たる光は被写体に陰影がつきにくく立体感が得られなかったり、凡庸で説明的なインパクトに欠ける写真になりやすいといったデメリットもあります。
逆光
逆光は被写体の後方から当たる光のことです。記念撮影などでは嫌われることが多い逆光ですが、風景写真においては大きなメリットとなり得ます。
逆光では陰影が強く付き高コントラストなインパクトのある写真となります。朝夕の焼けた空などを背景に被写体のシルエットを写しこめばドラマチックな写真に仕上がります。
逆光時の撮影で太陽など強い光源から発せられる光がレンズに入る場合は、ゴーストやフレアなどの有害光が発生しないようにレンズフードの使用や光線に手をかざすなどの工夫をしましょう。
有害光やレンズフード関連について詳しくはこちらの記事へ
撮影に必須!レンズフードの効果・役割とは?付ける2つのメリットサイド光
サイド光は、被写体の左右の横方向から当たる光のことです。太陽が低い位置にあるときに得られる光となります。強すぎないコントラストで被写体に陰影が付くことで、被写体の立体感を最大限に引き出すことが出来ます。
光の当たる部分と当たらない部分が画面に混在することでその場の光の雰囲気を伝えやすく、風景の表情を引き出しやすくなります。
スポット光
スポット光は、被写体の一部だけに当たる光のことです。雲間から光が漏れ出すような、晴れていながら雲が浮いているような条件や、木漏れ日の中などで出会うことが出来ます。
風景の中の印象的な部分に光が当たることで、被写体を際立たせるドラマチックな描写に出来ます。スポット光が見つかりそうな条件の時は、積極的に印象的な場面が現れないか観察しましょう。
少し低めの露出で撮影するのがポイント。
拡散光
拡散光は、被写体に対して全方向から当たる光のことです。雲がかかっている天気の時や、日光が入り込まない鬱蒼とした森や渓流などで得られます。
しっとりとした落ち着きのある風景が撮りやすくなり、滝や渓流のディティールを引き出すことも出来ます。
どのような場所を撮ってもコントラストが得にくくなってしまいますが、足下の花や植物の細かい描写をしやすくなります。
一眼レフでの風景撮影で押さえておきたいおすすめの撮影設定・撮影技術
風景写真では絞り優先(A)モードがおススメ!
絞り優先モードでは、F値を撮影者が決めるとそれに合わせてカメラが被写体に適した明るさになるようにシャッタースピードやISOを自動で設定してくれます。
被写界深度(ピントの合っている範囲)や被写体の解像感、ボケの大きさは、F値をコントロールすることで調節します。これらの要素をより迅速に自由自在にコントロールするために、絞り優先モードの常用をお勧めしたいです。
⇒背景をぼかしたい人必見!絞り(F値)って何?脱初心者間違いなし!
被写体の動きを表現したいときは、シャッタースピード優先(S)モードかマニュアル撮影がオススメ!
風景写真に動きを取り入れることで、印象的な一枚にすることもできます。
1/10秒から数秒以上のシャッタースピードに設定し、草原や山の草木のそよめきや水の流れを表現してみましょう。明るい環境の場合はNDフィルターが必要になるかもしれません。
関連:滝や花火の撮影からポートレートまで!表現を広げるNDフィルターの選び方と使い方
シャッタースピードについて詳しくは・・・
シャッタースピードを理解することで、一眼レフで美しく・確実に写真を撮る!ISO感度の設定について
風景写真に限らず、細かいところまで綺麗に写真を写し出したいときは、ノイズを押さえ画質を低下させないためにISO感度は100~500くらいに抑えたいです。
手持ち撮影の場合は、ISO感度はオートに設定して最適なシャッタースピードを使い手ぶれを防ぐべきですが、三脚がある場合はISO感度のオートの設定は解除しできるだけ低い数値に設定しましょう。
ISO感度について詳しくは・・・ ISO感度とは?これを理解すればノイズを減らせます!
ホワイトバランスで雰囲気を出す
ホワイトバランスをコントロールすることで、写真全体の雰囲気を変えることができます。しかし、オートホワイトバランスにしていると単調な色合いになってしまいがちです。
最適なホワイトバランスにその場で設定するのもよいですが、基本のホワイトバランスは「太陽光」の設定がオススメです。少しだけ青みがかかり、風景にある空気感が出やすくなります。
ホワイトバランスについて詳しくは
RAW画像撮影のススメ
RAW画像とは、センサーが取り込んだ加工前の画像データです。普通に写真を撮って表示されるJPEG画像と異なり、後からの加工に対する耐性が強く、撮影時に設定が完璧でなくても現像ソフトを用いればきれいに仕上げられます。
将来的にしっかりとした写真を撮ってみたい方にはぜひ知っておいてほしいです。
一眼レフの風景写真撮影、基本の心得
撮影前に十分な情報収集を。
四季の風景は日々移ろいゆきます。目的の撮影地がある場合、市町村の観光情報やSNSを活用してタイムリーな情報を手に入れられるようにしましょう。
せっかく狙ってきた花がもう散ってしまっていた、なんてことになると悲しい事になってしまいます。
ほかにも撮影地へのアクセスを調べるのはもちろん、日没や日出の時刻、月齢なども把握しながら撮影するようになると撮影の楽しみ方ももっと増えます。
自らのコンディションも万全に。
風景写真撮影は自然の中でのロケーションが多いです。適した服装や装備から食料や飲料まできちんと準備して撮影に臨みましょう。
体調が万全でないと撮影時の集中力が落ちたりモチベーションが下がってしまいます。
服装は予想される気温から5℃以上低下しても暖かくいられるよう準備しましょう。じっと体を動かさない写真撮影における体温の低下は予想以上に体力を奪います。
機材の扱い・運搬に気をつける。
屋外の自然の中でカメラやレンズを落とすと、取り返しのつかないアクシデントに繋がりかねません。レンズ交換やカメラの三脚への据え付け・取り外しなどはしっかりと手に持って確実に行いましょう。
三脚の設営も安定した場所を選び、強風で煽られ倒れたりしないよう目を離さないようにしましょう。
運搬時は確実に機材をカバンに仕舞ったり取り付けたりし、落としてしまわないようにしましょう。私は渓谷での撮影でリュックのジッパーが仕舞っておらずレンズを谷底に落としてしまったことがあります・・・
一眼レフでの風景写真とレンズの種類・焦点距離
風景写真に適したレンズとは?
風景写真以外の撮影でも言えることですが、レンズはやはり単焦点レンズの方が良い写りをします。ズームレンズより精細で、豊かな色合いの描写をしてくれます。
旅や登山などのアウトドアでカメラを持ち出す場合は、高倍率ズームレンズもおすすめです。
レンズ交換の手間を省き、シャッターチャンスを逃しにくくできます。1本の装着でレンズ2本分以上の広い焦点域をカバーすることで、荷物を減らすことにも繋がります。
風景写真に適したレンズの焦点距離は?
風景写真と言うと、広い風景の写真がイメージされると思います。
人の両目が見た光景に近く、印象的にその場の風景が分かる広い風景写真が美しく見えやすいのです。そのため一般的な風景写真に向いているのは、やはり広角の14〜30mmくらいの焦点距離だと思います。
しかし、望遠の焦点距離域でも風景写真は撮れます。風景の美しい箇所だけを切り取ったり、圧縮効果を生かして遠くの風景を大きく映し出すことで、非常に印象的な風景写真を撮ることが望遠レンズなら出来ます。
結局のところ、焦点距離の選び方は個人の好みとなります。たくさんの写真を撮って、自分の好きな焦点距離を探すのも風景写真の楽しみの一つです。
風景写真撮影に必要な機材、あると良い機材
三脚
必須となる機材です。十分に明るい環境で、手ブレを起こしたりISOが上がったりしない場面なら必要ありません。しかし、風景写真が最も映えるトワイライトタイムやブルーアワーの時間帯は薄暗く、確実に美しく風景を写すために三脚は風景写真撮影では常に持っていたい機材となります。
レリーズ
三脚撮影において長いシャッタースピードで撮影するとき、カメラに振動を起こさずシャッターボタンを押して撮影したり、バルブ撮影を行うときに必要となります。
無ければセルフタイマーの機能で代用出来ますが、シャッターを切るタイミングを狙うのが難しくなります。
写真左のような液晶のついたレリーズでは、何秒に何回、何秒間シャッターを切るか設定できたりもします。
使いこなせるようになれば、タイムラプスや比較明合成用の写真撮影のときに撮影現場にずっと居続けなくても良くなるかもしれません。
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PLフィルター
空の色を濃くしたり、水面や木々の葉っぱなどの物の表面の反射を押さえ、色合いやコントラストの強弱をコントロール出来ます。
PLフィルターの使い方や効果について詳しくはこちら
NDフィルター
NDフィルターとは、暗いフィルターで物理的にレンズに入る光を弱くします。明るい環境でもシャッタースピードを遅く設定できるようになり、風景の中の物の動きや水の流れが表現できるようになります。
身近な風景で普段から一眼レフでの風景撮影練習を!
写真のセンスは経験から養うことが出来ます。
どんな風景の、どのような部分を、どんな構図で切り取ることで美しい写真になるのかを直感的に分かることが出来るようになるためには、日頃からカメラを持ち出し色んな風景を撮るのが一番です。
センスだけで無く基本的なカメラの操作方法も身についたり、決定的瞬間を撮影出来る確率も上がるため日頃からカメラを車やカバンの中に忍ばせておくと良いでしょう。
まとめ:一眼レフの風景撮影上達への近道は他人の写真を見ること!
風景写真の撮り方、考え方はまず一番に撮影の経験から身に付けることが出来ます。そして次に重要になるのが、他人の写真を見る事です。
雑誌やインターネット、SNSなどでプロの写真家や気に入ったセンスの写真を撮る人の撮影した様々な写真を見ることで多くのセンスや技術を取り込むことができます。
ジョンくん
風景写真は、経験の積み重ねで自分の表現したい景色を撮影できるようになります。日頃からの情報収集とカメラの基本操作、論理的な構図や色彩の使い方の工夫、長期的な撮影計画などをしっかりと行っていくことがいつの日かのあなただけの絶景写真につながります。
これから一眼レフを購入してみたい!と考えている方はレンタルで一度試してみるのもオススメ。
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持っている一眼レフではなく、別のものを試してみたい方も是非チェックしてみてくださいね。