最近では会議や音楽ライブなどいろいろなイベントをオンラインで開催するようになってきています。
パソコン一台あれば今すぐにでもZOOMやGoogle MEETSなどのWEB会議を開くことができます。しかし、1対大勢のウェブセミナーや会議の配信ではウェブカメラや内蔵マイクでは画質、音質共に十分と言えるものではありません。
そこでお勧めするのがビデオスイッチャーです。
この記事を監修した専門家
目次
ビデオスイッチャーとは?
ビデオスイッチャーとはカメラやパソコンなどの映像を切り替える機械です。
複数台のカメラとスライドを表示しているPCなど複数ソース(映像の元素材)を切り替えることで視聴者の視線をより効果的に誘導することができます。
一つの映像に司会者、発表者、スライドなど全てを詰め込もうとすると一つ一つの要素が小さくなり、視線も散ってしまいがちです。
そこで一つのカメラに一つの要素を入れてスイッチャーで切り替えていくことで、退屈になりがちな映像に変化を付けながら、伝えたいことを伝えやすくすることができるようになります。
ビデオスイッチャを使用したマルチカメラ(複数台カメラ)構成では必要になる機材が増えてしまいますが、簡単にハイクオリティな映像を作り上げることができるようになります。
ライブ配信で必要になる機材の選び方
ビデオスイッチャー
入力映像を切り替える時に必要になる機材です。これがないとカメラを複数台使用した配信はできません。
ビデオスイッチャーには必要に応じてカメラの映像だけでなくPCやスマートフォンなどの映像を入力することもできます。必要に応じて入力ソースを構成するといいでしょう。
会議のライブ配信ではHDMI入力が4入力あれば十分でしょう。操作ボタンがわかりやすい機種は現場でも迷いにくいのでおすすめです。その他にもPinPやグリーンバック合成のクロマキーヤーなど追加機能で選んでもいいです。
ビデオカメラ・三脚
スイッチャーに入力する映像を撮影するのに使います。
カメラの映像出力端子にもいろいろありますが、今回はHDMI端子があればいいでしょう。
また、本番中に電源が落ちて撮影できなくなってはお話にならないのでACアダプタなどで電源の冗長性を確保しておくと良いでしょう。
ライブ配信をする場合、4K画質は必要ありません。4K画質は画質が良いぶんデータ量が増えてしまうので通信環境が良く無いと配信ができません。また、4Kに対応したビデオスイッチャーはまだまだ少ないのでせっかくの4Kも生かし切れません。
また、カメラを動かして発表者を追従しようとする場合は動きが滑らかなビデオ三脚を使用するといいでしょう。ビデオ三脚は写真用三脚と違い、カメラを載せる部分の動きがヌルヌルと滑らかになっており、画面酔いの原因となる手ブレを吸収してくれます。
PC (パソコン)
配信に使用するのはもちろん、別にVTRの出力やスライドの出力など必要に応じて2台以上のPCがあると使いやすいです。
また、ビデオスイッチャーの中にはPCからスイッチングなどの操作ができるものあります。PCでスイッチングする場合はタッチパネルディスプレイがあるとより操作が楽になります。
HDMIの各種ケーブル
映像をやり取りするHDMIケーブルや、機材を動かすための電源ケーブル、スイッチャーをPCでコントロールするためのUSBケーブル、インターネット接続のためのLANケーブルなどが必要です。
カメラからスイッチャーまで接続するためのHDMIケーブルは3m以上の長いケーブルを用意しないと空中をケーブルが通ることになるので危険です。設置場所を考えて十分な長さのケーブルを準備しましょう。
HDMIケーブルにもいくつか種類があり、カメラやスイッチャーなど適切なケーブルを用意しないと接続できません。ただ、HDMIは規格上の上限はないものの10m以上の長さになると信号が不安定になるので10m 以内の設営をしないといけません。10m以上になる場合はBNC端子の同軸ケーブルを使用したSDIという規格で構築するといいでしょう。
- HDMI Type-A
一番大きく標準的なHDMI端子です。テレビやパソコン、ゲーム機などあらゆる機械に搭載されていて、ビデオスイッチャーに搭載されているHDMI端子もType-Aです。 - HDMI Type-C
ミニHDMIとも呼ばれType-Aより一回り小さいHDMI端子です。この端子は主にビデオカメラに搭載されています。スイッチャーやテレビと接続する場合は片側がType-A、もう反対側がType-Cのケーブルを使用します。 - HDMI TypeC
マイクロHDMIとも呼ばれる端子で、スマートフォンやタブレット端末など小型の製品によく搭載されています。また、SONY製のビデオカメhttps://picky-s.jp/wp-admin/tools.phpラ(Handy Cam)にはこのType-D端子が多く採用されています。上と同じようにこれらの機器に接続するには片側にType-D端子を備えているケーブルを使用します。
HDMIキャプチャ
スイッチャで切り替えた映像をPCに取り込むためにはHDMIの映像をUSBなどに変換するHDMIキャプチャという機材が必要になります。PCに搭載されているHDMIポートは映像データの出力しかできません。したがって映像を入力するためには別途の機械が必要になるわけです。
HDMIキャプチャは安くて1000円台からありますが、質が悪く画質が低下したり最悪認識しなかったりと不具合が多いので1万円弱からのキャプチャをおすすめします。
また、後述のATEM miniなど一部のビデオスイッチャにはHDMIキャプチャの機能が内蔵されています。USBケーブルで接続するだけでウェブカムのようにPCが認識できるようにしてくれます。
マイク
ビデオスイッチャーには音声入力も可能です。また音声入力をスイッチャーに接続した場合、カメラと同様にマイクの音声もスイッチャーで管理することができます。
オーディオインターフェース機能付きのUSBオーディオミキサを使用すれば音声信号を別個でPCに入力して配信ソフトウェア上で重ねることができます。
この場合、複数の音声入力を一つずつ調整することができ、音量調整をフェーダというつまみで感覚的に調整することができます。
おすすめATEM Miniシリーズ
超高機能なのに4万円台という破格
エーテムミニと読みます。鉄腕系のそれになりかねませんからね。
ATEM Miniの魅力はなんと言ってもその価格の安さです。しかも安かろう悪かろうではなくHDMI4入力やビデオキャプチャとしても使えるなど、価格以上の機能を搭載しています。
ライブ配信に
ATEM Miniは本体にUSB-C端子を搭載しており、あらゆるコンピュータに接続することができます。コンピュータからはUSBウェブカムとして認識されるため、OBSなどの配信ソフトウェアやZOOMなどのビデオ会議システムなどで映像を使用することができます。
4系統までのHDMI入力を接続できるので出演者のクローズアップ、司会者、会場のワイドショット、スライドなどを切り替えることが可能になります。
異なる画質も
4系統のHDMI入力は全て独立していて、それぞれ専用のアップ・クロスコンバータを搭載しています。
1080iや720pの入力ソースを入力した場合でも自動的にスイッチャーで選択したビデオフォーマットに変換されます。
アップ・クロスコンバータがないと、プログレッシブソースとインターレースソースが混在した場合にどちらかが映らないことがあったり、画像サイズが違った場合に小さい方の映像の周りに黒帯が出てしまったりすことがあります。
放送品質スイッチャー
ATEM Miniには使い勝手の良いボタンが搭載されており、ソースの選択はもちろんのこと、映像の切り替えエフェクトの選択やエフェクトなどの設定が選択できます。
映像を切り替えた後のプログラム映像は背面のHDMI OUT端子やWEBCAM OUTのUSB端子で出力されます。
背面のHDMI端子は「AUX」出力で、4系統のHDMI入力をクリーンに切り替えたり、プログラムフィードを出力したりすることもできます。放送スタイルのMEスイッチングを選択している場合はプレビューフィードを出力して切り替え前にソースの確認もできます。
LANケーブルでPCと接続することでPinPやクロマキーなどの細かい設定やスイッチング用のフェーダなどボタンのみでは操作できない細かな設定もすることができます。
マルチビューは搭載しない
4つの入力映像を確認するためのマルチビュー機能は上位機種であるATEM Mini PROにしか搭載されません。
マルチビュー機能はカメラがスイッチャーと離れている場合や、カメラマンが別にいる場合など撮影されている映像が確実ではない時に、切り替え先の映像が安定しているか確認するのに必要になります。
この機能がないと狙った映像に切り替えができなかったり、カメラマンとの息が合わずに画角がずれてしまうこともあります。
マルチビューのない本機はZOOM会議で一人で切り替える場合など比較的小さな現場で使用するのに最適なスイッチャです。
ATEM Miniより多くのことを
ATEM MiniのPro
ATEM Mini ProはATEM Miniの全機能に加えてさらに多くの機能を搭載しています。
ATEM Miniは安い上に高機能とはいえ足りない部分が多く数百人規模の配信を行うには物足りませんでした。そこで登場したのが本機、ATEM Mini Proです。
Proでは、USB接続のフラッシュメモリにH.264で直接収録でき、イーサネットを介してYouTube Liveに直接ストリーミングすることもできます。さらに、マルチビューも搭載しているため4台のカメラにプログラム、プレビューを確認できるだけでなく収録やストリーミングさらにはオーディオのステータスも確認することができます。
イーサネット経由でライブ配信
ATEM Mini Proには配信形式への変換機を内蔵しています。背面のLAN端子から直接YouTubeやFacebookなどに高品質でライブ配信できます。
PCのソフトウェアで配信サービスのストリーミングキーを入力するだけでライブを開始することができます。
PCコントロールソフトウェアのATEM Software Controlには配信のステータスが表示され、マルチビューでも確認することができます。
ワイヤレスインターネット接続もできるため、WiFiに接続したり4G・5G携帯回線を使用したテザリングで簡単に移動先でも配信ができます。
フラッシュディスクに録画
ATEM Mini Proでは配信データをUSB接続のHDDやSDDなどのフラッシュディスクに直接収録することができます。大容量のフラッシュディスクを接続すれば、長時間の収録が可能です。H.264形式のmp4ファイルで収録されるため、そのままYouTubeなどのオンラインビデオサイトに直接アップロードできます。
USBハブを使用すると複数ディスクへの収録にも対応し、一つのディスクがフルになったら次のディスクに収録を継続するためノンストップで収録ができます。
配信も録画もこれ一台で
ATEM Mini Proの上位機種
ATEM Mini Pro ISOには下位モデルのATEM MiniやATEM Mini Proの全機能に加え、個別収録機能が搭載されました。
映像ソース個別収録機能
ATEM Mini Pro ISOでは4入力全てのクリーンフィード(何も重なっていないそのままの映像)およびプログラム(スイッチング後の映像)を含む全ての映像をUSBフラッシュディスクに収録します。また、ATEMから挿入された画像も同時に保存されます。
ビデオファイルには全てにタイムコードやカメラ番号などのメタデータタグも含まれるので、あとからライブイベントの編集をする時にも困りません。
全てのオーディオソースも独立ファイルですべて収録されるので後からミックスしてハイクオリティな映像に仕上げることもできます。
DaVinci Resolveでライブを編集
ATEM Mini Pro ISOでは同じくBlackmagic Design製のDaVinci Resolveという動画編集ソフトでライブプロダクションを編集することができます。
ATEM Mini Pro ISOでは動画ファイルと同時にDaVinci Resolveプロジェクトファイルも収録します。全てのカットや、切り替えエフェクト、ディアプールの画像も読み込まれます。このファイルを使用すれば編集点の微調整やカメラ映像の追加なども難しい設定なしにすることができます。
DaVinci Resolveの編集画面ではマルチビューでショットを簡単に選択できます。また、DaVinci Resolveではカラーコレクションも簡単に適用できるので、ライブ配信を後から高クオリティな動画に仕上げることができます。
その他おすすめビデオスイッチャー5選
映像を自由に操るコンパクトHDビデオスイッチャー
ビデオ収録やライブ配信に
ポータブルなV-1HDはA4縦半分のサイズで収録や配信など様々な場面で活躍します。
4系統のHDMI入力を搭載していて入力には1080i/1080p/720pに対応していてビデオカメラやスマートフォンなど様々な解像度の混在が可能です。Bluerayプレイヤーなどのデータ保護「HDCP」にも対応しています。
直感的な操作で様々な切り替えエフェクトを適用することができます。2画面を合成したPinPやグリーンバック合成などもV-1HD一台で完結することができます。
8入力の多機能機種
HDMI8発のモンスター
V-8HDには8つのHDMI入力が搭載されています。体育館サイズの設営をする筆者からするとHDMIは距離が稼げないので使いづらいのですが、会議室サイズの会場では多くのPCやビデオカメラなどをたくさん繋ぐことができるのは大きなメリットだと思います。
アウトプットにはプログラム出力、プレビュー、メニューの3出力が可能です。プログラムはスイッチング後のメイン出力、プレビューは大画面で入力ソースを確認したい時に使用することができます。本機は小さいながらディスプレイを搭載しているのでそこでプレビューができるのですが、大きな画面は何かと便利です。
2つのPinPダイヤル
PinPを2つ独立して設定することができます。
PinPはピクチャインピクチャという機能で、テレビ番組のワイプ画面など画像の上に画像が重ねられる機能です。
BlackmagicのATEMシリーズもPinPを使用できるのですが、1つだったり、設定がややこしかったりとお世辞にも簡単とはいえません。本機では上下左右の移動やズームなどが2つのダイヤルで調整できます。
また、PinPのソースも独立したボタンで設定することができます。物理ボタンでスムーズにPinPを使えるのはこの機種ならではです。
民生機にしては少しお高め
一般向けの機種では少し、否だいぶ高い40万円弱です。ただHDMI8in 3outのビデオスイッチャーはなかなか無いので、仕事でガッツリ使いたい方や、5以上の入力を常設したい会議室などでは導入する価値もあるのでは無いでしょうか。
安い!けどハイアマ向け
HDMI4+SDI4
入力はHDMI4発とSDIが4発の合計8入力を搭載しています。
あまり馴染みのないSDIですが、プロユースではよく使われる信号のことを言います。BNC端子という同軸ケーブルを使用し、カチッと確実に留められるのが特徴です。
HDMIをSDIに入力するにはBMD(Blackmagic Design)などから出ているHDMI to SDIコンバータを使用する必要があります。SDIは100mまでケーブルを伸ばせるのでカメラからブースまで距離がある場合も安定して接続ができます。
ハイアマチュア-プロ向け
スイッチングコントロールなど基本的にイーサネット接続でPCのコントロールソフトウェアを使用するなどあまり初心者向けの機種とはいえません。
基本的なスイッチャーの使い方がわかっていて入力数が足りないなど初心者向け機種に不満を感じ始めた方におすすめの機種です。コンパクトなボディに15万円弱という驚異の安さは魅力的です。
あまりおすすめできないビデオスイッチャー
ビデオスイッチャーの人気売れ筋ランキングもチェック
こちらは現在Amazon、楽天、ヤフーショッピングで紹介されているビデオスイッチャーのランキングです。最安&人気のアイテムを是非チェックしてみましょう!
ビデオスイッチャーで高品質なライブ配信をしよう
新しい生活様式の浸透に従ってライブ配信の需要はとても高まっています。
今はあまり選択肢の少ない業界ですが、これからさらに初心者向けの使いやすい機種も増えてくるでしょう。
あまりわかりにくい世界だけに何を選んだらいいのかも難しいですが、この記事をビデオスイッチャー選びのヒントとしてみてはいかがでしょうか?